ガンと漢方薬

【はじめに】

 昨今、ガン治療や抗ガン剤の是非について、様々な書籍や情報があふれています。薬局店頭でも、「ガンには、どんな漢方薬が良いのですか?」といったお問い合わせも少なくありません。

 また、気になることの一つとして、お問い合わせの患者さんの中に、漢方と信じて、サプリメントを服用している例が多いことです。
 これらのサプリメントは、本当に効果があるものであれば良いと思いますが、「ガンには、○○が良い!」とか、「○○で免疫力UP!」などのキャッチフレーズを武器に、実際は大した臨床データや裏付けの無いものも多く見られます。

 当然のことですが、ガンに効果がある漢方薬といっても、一つの処方がすべての患者さんに良いということはありえません。他の疾患同様、患者さんの症状や体質により適応する処方は様々です。漢方では、「扶正」と「袪邪」という概念から、ガンに対処していきます。

漢方的に見たガンの発症のしくみ

漢方的に見ると、ガンは、正気(体力・抵抗力)の不足に、ストレスや過労、睡眠不足、飲食の不摂生、急激な気候の変化などの外部刺激が加わり、臓腑・経絡の機能が失調し瘀血や痰濁などの病理産物が積滞して発症すると考えられます。

漢方的に見たガンの発症のしくみ

漢方的に見たガンの治療

東洋医学には、「扶正袪邪」という原則があります。「扶正」とは、正気(体力・抵抗力)を増強すること、「祛邪」とは、体にとって不都合なものを取り除くことです。「祛邪」は、直接ガン細胞を攻撃する方法で、西洋医学における手術、抗ガン剤や放射線療法なども「祛邪」といえるでしょう。

「祛邪」においては、抗ガン剤のように直接ガン細胞を攻撃するといわれている漢方薬もありますが、むしろ東洋医学の得意分野は、「扶正」であり、体力、抵抗力を増強することにより、間接的にガンに対処していきます。また、西洋医学のガン治療によって生じる体力の低下や貧血、胃腸障害、倦怠感、浮腫などの副作用を軽減します。西洋医学と併用しても、互いの短所を補い、長所を発揮する組み合わせといえます。

漢方的に見たガンの治療
漢方的に見たガンの治療

ガンの漢方治療に用いる生薬の一例

◎祛邪

1.清熱解毒
牛黄、半枝蓮、白花蛇舌草、山梔子、地骨皮、黄連、黄芩、黄柏、烏梅、金銀花、竜胆、苦参、地楡、魚腥草、蒲公英、山豆根など。

2.軟堅散結
猪苓、麝香、莱服子、牡蛎、殭蚕、瓜蔞、半夏、天南星、木瓜、菖蒲、遠志、威霊仙、前胡、夏枯草、海藻、昆布、蜈蚣など。

3.理気活血化瘀
莪朮、三稜、大黄、水蛭、白芷、紅花、牡丹皮、艾葉、全蝎、紫草根、丹参、桃仁、赤芍、田七、延胡索、乳香、没薬、蒲黄、五霊脂、青皮、陳皮、枳殻、香附子、烏薬、縮砂、川楝子、木香、川芎、郁金など。

◎扶正

1.補気健脾
人参、黄耆、白朮、山薬、五加皮、薏苡仁、大棗、甘草など。

2.養血滋陰
熟地黄、当帰、白芍、何首烏、枸杞子、鶏血藤、阿膠、竜眼肉など。

3.養陰生津
生地黄、天門冬、麦門冬、沙参、亀板、鼈甲、百合、山茱萸、玉竹など。

4.益腎助陽
冬虫夏草、桑螵蛸、補骨脂、淫羊藿、肉蓯蓉、黄精、続断、杜仲、梅寄生など。

ガン治療においては西洋医学も含め、「扶正」と「袪邪」のバランスをとることが重要なポイントとなります。

「ガンには、○○が良い!」といった言葉に惑わされずに、患者さんの主症状や体質などを分析し、漢方の診断基準に則り、お身体に合った漢方薬を服用していただくことが最も大切です。